心に浮かぶアイデアやインスピレーションについて、です
詩の詞
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詩の詞
とけるまえにーⅢ
工場を後に、暮ヶ岳のふもとを目指した。暮ヶ岳は、夕暮れ時の山際がちょうど裾野の紅花畑と共に自然の諧調を浮かび上がらせることから、その名がつけられたという。暮ヶ岳の頂が薄明るい空を背景に浮かび上がる。山肌には平成初期の噴火 […] -
詩の詞
とけるまえにーⅡ
田中康弘は、明朗とした、けれども快活かと聞かれるとそうではない、そんな青年だった。大学3年の学祭で話しかけられたのが彼を知ったきっかけだが、いつから親しくなったのかはあまり覚えていない。サークルや趣味が同じというわけでは […] -
詩の詞
とけるまえに
四角くくり抜かれた景色は、まるで切り貼りされた絵のようで、どこか嘘っぽい。流れる雲も、遠ざかる街並みも、ただの装飾とさえ思えてくる。東京を発ち、向かった先は山形県最上地域の山中にある「ツイナ村」。明治時代、日本の紡績業を […] -
詩の詞
The relative moon
冷えかけのスパゲティをフォークで弄んでばかりいるのは、現実を飲み込めない気持ちの現れである。温かさを失い、もはやただの冷たいパスタと化したそれは、まるで自分自身を映し出しているかのように見え、気づけば私は部屋の外にいた。 […] -
詩の詞
時のしじま
ベンチに腰掛けて君を待つ 木枯らしは少し身に染みるけど 陽の光を浴びながら 黄色の帽子が青信号を駆けていく 遠くで聞こえる笑い声と、風に乗る葉のささやき 公園には、キャッチボールをする親父と爺 言葉を超えた何かで そっと […] -
詩の詞
微熱
クラクラする 夕陽でも降ってきたかな って今日は土砂降り 雨音が胸を叩く 枯れた涙腺へ流れ込む 鼓動と一緒に感じた熱 心がざわつく 滲む景色に紛れて 失ったものを探していた 足先を湿らす水たまり 映りこむのは陽炎か 見つ […] -
詩の詞
冷たい熱
ふと眠りから目が覚めた心はもう現実へと歩みを進めていたようだ清々しい目覚めだ草の声が聞こえてくる風の香りが肌をくすぐる澄んだ空気を脳へと送った少しずつ世界が白んでいく冬空の下私を駆り立てる自由への憧憬未知への切望活力への […] -
詩の詞
安閑たるもの
絶望が希望のふりして近づいてくる。 コンコンコンって近づいてくる。 このままだと狂ってしまう。 ダメだ。 そのまま、海へと落ちていく。 落ちていく。 ああ、安らぎを覚えるこの生温かさ。 絶望のこの血の香り。  […] -
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晴れ風
明るく、優秀、誠実な。 皆んなに慕われ、頼られる。 リーダーという言葉はあの人のためにあるようだ。 澄んだ人だ。 心の底まで澄んだ人。 濁りを探してみても無駄。 だってないもの。 暖簾に腕押し。 一枚布を織りなす無数の糸 […] -
詩の詞
aRITAI
風になりたい。どこまでも連れていけるから。 水になりたい。どこまでも澄んでいられるから。 鳥になりたい。どこまでも羽ばたいていけるから。 土になりたい。どこまでも抱きしめていられるから。 火になりたい。どこまでも熱を帯び […]