咽頭弓(鰓弓)と咽頭嚢(鰓嚢)は、胚発生の初期において重要な構造で、頭頸部の多くの器官や構造の分化に関与します。これらの構造は魚類の鰓(えら)に対応するものであり、人間を含む脊椎動物では特定の器官に発達します。
この記事では、咽頭弓(鰓弓)の分化、咽頭嚢(鰓嚢)の分化、そして咽頭弓(鰓弓)動脈の分化について、解説しています。
咽頭弓(鰓弓)の分化について
頭頚部の発生には咽頭弓(鰓弓)が重要な役割を果たしています。咽頭弓は第4終末頃に頸部側面の隆起として出現し、それぞれの咽頭弓は、それぞれが決まった顔面の筋骨格、神経へと分化していきます。以下の表にまとめたいと思います。
咽頭弓 | 神経 | 筋 | 骨格 |
Ⅰ | 三叉神経(Ⅴ) | 咀嚼筋、顎舌骨筋、顎二腹筋の前腹、口蓋帆張筋、鼓膜張筋 | 前額骨、上顎骨、頬骨、側頭骨の一部、メッケル軟骨、下顎骨、キヌタ骨、ツチ骨、前ツチ骨靭帯、蝶下顎靭帯 |
Ⅱ | 顔面神経(Ⅶ) | 顔面表情筋、顎二腹筋の後腹、茎突舌骨筋、アブミ骨筋 | アブミ骨、茎状突起、茎状舌骨靭帯、舌骨小角、舌骨体の上部 |
Ⅲ | 舌咽神経(Ⅸ) | 茎突咽頭筋 | 舌骨大角、舌骨体の下部 |
Ⅳ~Ⅵ | 迷走神経(Ⅹ) | 輪状甲状筋、口蓋帆挙筋、咽頭収縮筋、咽頭内の筋 | 喉頭軟骨 |
眼を通すだけでも疲れますね、、、
まずは、神経を覚えましょう。語呂合わせとして、発生の分野なので「こんなキュート(Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)な赤ちゃん」みたいなのはいかがでしょう。
神経を覚えれたら、次に筋・骨格系です。たくさんありますので、まずは覚えやすいものを。例えば、Ⅰ番は咀嚼筋、Ⅱ番は表情筋、などから始める感じでいいと思います。
また、解剖学と照らし合わせて考えれたら覚えやすいかもしれません。例えば、筋とその支配神経との対応を発生学的に覚えてみたり。それから、ツチ骨と、キヌタ骨はⅠ番、アブミ骨はⅡ番由来ですが、耳小骨の並びってもろ、この並びですよね。こんな感じです。(筆者も解剖あまり覚えてないので、これ以上例を挙げれません( ノД`)シクシク…)
咽頭嚢(鰓嚢)の分化
次に、咽頭嚢(鰓嚢)の分化についてです。咽頭弓というでっぱりと均衡をとるかのように、その内側では嚢状の突出が見られ、咽頭嚢とよばれます。それぞれの咽頭嚢から生じる構造を以下にまとめます。
第1 | 鼓室(中耳腔)、耳管 |
第2 | 口蓋扁桃、扁桃窩 |
第3 | 下上皮小体、胸腺 |
第4 | 上上皮小体、鰓後体[甲状腺傍濾胞細胞(C細胞)] |
上皮小体は第3から下が、第4から上が発生することは注意しておきたいです。
咽頭弓動脈の分化について
最期に咽頭弓動脈の分化についてです。咽頭弓動脈は、胚発生の過程で発生する一連の動脈であり、最終的には成人の主要な動脈系に分化します。
咽頭弓動脈は、左右で6対形成されます。ただし、これらの血管は同時に存在することはなく、第1・2咽頭弓動脈はそのほとんどが、ごく早期に消退します。しかし、残った一部がそれぞれ、顎動脈(1)、アブミ骨動脈・舌骨動脈(2)へと分化します。
また、第5咽頭弓動脈は痕跡的で、きちんとした血管の形態をとらずに消えてしまいます。
第1咽頭弓動脈が消失すると、心臓から出た血液の多くが左第4咽頭弓動脈を通って左背側大動脈へ流れるようになります。その結果、この経路が太くなって、大動脈弓と下行大動脈の原基の部分ができます。
右の第4咽頭弓動脈は右鎖骨下動脈の基部に分化します。
第3咽頭弓動脈からは、総頚動脈と内頚動脈近位部が生じます。内頚動脈の遠位部は、左右の背側大動脈の頭方部分からできます。
第6咽頭弓動脈の近位部は、肺動脈幹と左右の肺動脈の近位部になります。また、左側の遠位部のみ動脈管へと分化します。(右側は消失します。)
以下の表にまとめていきたいと思います。
第1咽頭弓動脈 大部分は消失するが、ごく一部が顎動脈へ | |
第2咽頭弓動脈 大部分は消失するが、ごく一部がアブミ骨動脈・舌骨動脈へ | |
第3咽頭弓動脈 総頚動脈と内頚動脈の近位部 | |
第4咽頭弓動脈 左は大動脈弓と下行大動脈の一部に、右は右鎖骨下動脈の基部になる | |
第5咽頭弓動脈 ほとんど発達せず、痕跡的 | |
第6咽頭弓動脈 肺動脈と動脈管(左側のみ) |
第3・4・6咽頭弓動脈が、発生学的には大事であること。まずはこれを覚えるべきかなと思います。次に、第4咽頭弓動脈から発生する2つの動脈。大動脈と右鎖骨下動脈ですが、この2つの共通点って何か浮かびますか?
、、、そうです。実は、両方とも反回神経がくぐる動脈なんです!
これが分かれば、後は第3、6鰓弓動脈は、頸と肺だったなってなればOKだと思います。
さらに、よく知りたいという方は、教科書など、参考にしてほしいです。特にアトラスをみて、視覚的に理解することをお勧めします。