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詩の詞
とけるまえにーⅢ
工場を後に、暮ヶ岳のふもとを目指した。暮ヶ岳は、夕暮れ時の山際がちょうど裾野の紅花畑と共に自然の諧調を浮かび上がらせることから、その名がつけられたという。暮ヶ岳の頂が薄明るい空を背景に浮かび上がる。山肌には平成初期の噴火 […] -
詩の詞
とけるまえにーⅡ
田中康弘は、明朗とした、けれども快活かと聞かれるとそうではない、そんな青年だった。大学3年の学祭で話しかけられたのが彼を知ったきっかけだが、いつから親しくなったのかはあまり覚えていない。サークルや趣味が同じというわけでは […] -
詩の詞
とけるまえに
四角くくり抜かれた景色は、まるで切り貼りされた絵のようで、どこか嘘っぽい。流れる雲も、遠ざかる街並みも、ただの装飾とさえ思えてくる。東京を発ち、向かった先は山形県最上地域の山中にある「ツイナ村」。明治時代、日本の紡績業を […]